作品名 |
作者名 |
カップリング |
「思い出の日記帳」 |
郭泰源氏 |
シンジ×カナミ |
○月×日
今日、お母さんが勝手に申し込んだ家庭教師が来た。あじさい大学の男の人だそうだ。
全然気が乗らないし、もしスケベな人とか変な人が来たら張っ倒してやろうと思ったけど、
ちょっと気弱そうな、良さそうな人なんで我慢してやることにした。
上京してまだ半年で一人暮らししてるらしい。靴下に穴が空いていた。正直、ちょっとダサいかも。
「じゃあ、次は漢文だね。ここの書き下し文を……」
「先生〜〜〜、彼女っているの?」
「『論語』っていう、中国の大昔の本なんだけど、孔子っていう人が……」
「無視するんなら勉強しな〜〜い。もう寝る」
「……勘弁してくれよ、吹石さん。お願いだから授業を……」
「いつまでたっても私のこと名字で呼ぶよね、先生?家庭教師になってもう半年なのに……」
「あのねえ……ウチの家庭教師センターでは、特に男の先生は気軽に女子生徒の
名前を呼ばないように、って指導されてるんだよ。なれなれしいって嫌がるコもいるだろうし……」
「でも私が良いって言ってるんだも〜〜ん。だから名前で呼んでよ〜〜〜」
「でもね、それは一応規則だから……」
「名前で呼んでくれないなら勉強しな〜〜〜い。もう止める〜〜〜」
「……子供じゃないんだから……」
「ぶ〜〜、私、中学生だけど、カラダは結構お・と・な・だ・よ。ホラ……」
「#$&%!!!!!!!!!!!!!ここここ、コラ―――!!!」
「先生、か〜〜わ〜〜いい〜〜、真っ赤になっちゃって〜〜。
あ、もしかして先生って女の人と付き合ったことないんだ〜〜?だから私も名前で呼べないんだ〜〜」
「だからなあ、そういう問題じゃ……」
「名前で呼んでよお……先生……」
「………ガキのくせに、流し目を使うな、似合わないから……」
「さっきは子供じゃないって言ってたクセに〜〜」
「……わかったよ、○○○さん……」
「ちゃんの方がいいな〜〜、私」
「……頼むから勉強しようよ、○○○ちゃん」
「は〜〜い、先生〜〜」
□月●日
どうも最近○○○ちゃんに振り回されっぱなしの気がする。やればできるコなのは分ってるけど……
なんというか、先生と生徒って感じの関係じゃない。俺が今付き合ってる女の子がいなのも事実だが、
こうもからかわれるのはちょっと……彼女がなかなか可愛くて魅力的な女の子なのも事実だけど、
さすがの俺もいくらなんでも中学生は………い、いや、そうじゃなくて!!!と、とにかく……
志望校受験も近いし、なんとか彼女にヤル気を出してもらえるよう、今日も頑張ろう。
「聖光の問題の傾向は大体つかんだかな?英語は特に長文が基本だけど、
実はそんなに難解なわけじゃないんだ。単語問題も毎年3問以上は確実に出るし……」
「ふ〜〜ん……意外にしっかり調べてきてるんだね、先生」
「……これが仕事だからね」
「仕事って言ってもバイトじゃん。なんでそんな頑張るの?先生にしたら、
本当は私が落ちようと受かろうと関係無いじゃん。それとも特別ボーナスが出るとか……」
「○○○ちゃん、なにかイヤなことでもあったのか?」
「……別に……なんだか最近良い高校に行けとか親が言うのがウルサイだけ〜〜」
「あのね、ほんの少し年上なだけの俺が偉そうな事言えないけど。努力した結果が報われる、
ってのは結構いいもんだよ?それに○○○ちゃんだって合格したらやりたい事とかあるんだろ?」
「やりたい事なんて、そんなの無い〜〜。あ〜〜あ、学校の先生や親もみんなそんなこと言うけど、
やりたい事の無い私みたいな人間は、どうすればいいんだろうな〜〜」
「やりたい事はさ、ある日突然空から降ってくるもんだとか思ってるの?」
「…………なによ、いきなり訳の分らないコトを……」
「やりたい事ってのはさ、自分で見つけるんだよ。少なくとも今それが無いんなら、
中学卒業してすぐ働くとかフラフラするよりは高校に行ってみて、色んな人とあったり色んなことをして、
見つけるんだよ。きっとね、○○○ちゃんのやりたい事は見つかるから……」
§
「……先生って、真面目だよね。そんな事言う人、私の周りにいない……」
「ついでに言うと、ウチのセンターは生徒が合格しても特別ボーナスなんて出ない。
俺はさ、せっかくこんな風に知り合ったから○○○ちゃんの喜ぶ顔が見たいって……そう、思ってる。
なにもせずに諦めるより、後悔しないように頑張って欲しいって思ってる」
「…………分ったよ、先生。私……やってみる……」
「ありがとう。大丈夫だよ、○○○ちゃんは結構飲み込みも早いし、きっと聖光だって合格するさ」
「ウン。ねえ、先生?」
「?なに?」
「私ね……本当はやりたいことが、ひとつあるんだ」
「ははは、ホラ、君だってやりたいことがあるんじゃないか……」
「先生と、デートしたい」
「………………へ?」
「ねえ……高校受かったら、私とデートして……先生」
「………あのなあ、あんまり人をからかうもんじゃ……」
「ずっと好きだったの。でも、今日初めて分ったんだ。私は、先生が好き。だから……」
「………冗談だとしたら、ちょっとしつこいぞ」
「冗談じゃ、ないの。お願い、約束して。合格したらデートしてくれるって。
そうすれば私、今よりきっと頑張れると思うんだ」
「……マジで?」
「マジで」
「………………………………………分った。その代り、その……勉強、今より真面目に……」
「!!わ―――い!!やった!約束だよ、先生」
「こここここ、コラ―――!抱きつくな!おい、だから止めろって………」
△月※日
今日は合格発表だ。お母さんとお父さんも一緒に行くとか言ってたけど、
恥ずかしいから断った。落ちてたらどんな顔して良いか分らないし………先生と一緒に行くから。
先生と、ふたりだけで行きたいから。合格したら、本当にデートしてくれるのかな?
「あああああ………あった!あったよ!先生!072番!」
「落ち着いて、○○○ちゃん!おめでとう!!すごいじゃん!」
「へへへへ〜〜〜、あはあ……本当だね、先生!」
「?」
「先生の言うとおり……努力した結果が報われる、ってのは悪くないねッ!」
「……なんだ、覚えてたのか……」
「えへへ……悪くない、悪くないよッ、先生!!」
「こ……こら、抱きつくなって!人が見てる……」
「忘れないでね?先生?」
「…………あのな、くすぐったいから耳元で話すのは……」
「で・え・と!約束したんだからね?」
「………あれやっぱマジなのか?」
「先生が生徒にウソ言っちゃダメだよね〜〜〜??じゃ、日曜日の朝九時に迎えに来て!
サーパス遊園地に行こうよ!私、お弁当作っていくから!」
「…………わかった」
「こんな可愛い子からデートのお誘いなんだから、もっと嬉しそうな顔してよお……それ!」
「ここここ、コラ――ッ!ホッペ引っ張んな!!!!」
◎月▽日
………しかし、本当に良いんだろうか?今でも狐につままれた気分っていうか……
今日のことはバイト先のセンターには内緒だ。当たり前だ。言えるわけがない。
生徒との恋愛は一応厳禁なんだから。……しかし厳禁に一応ってのは日本語としておかしいな。
でもま、これで○○○ちゃんの家庭教師も終わりだと思うと俺もそれなりに感慨深いもんがある。
中学一年の頃からずっと付き合って……って、そういう付き合いって意味では勿論無くて……
ああ、もう!……そ、それはともかく。明日で先生と生徒という立場で彼女と会うのも最後だ。
お互い良い思い出として終れるよう、努力しよう。
§
「へへへ、高所恐怖症だったんだね、先生?あんなに観覧車乗るの嫌がってたから、
もしかしてと思ってたけど……」
「……俺が悪かった。認める。だから勘弁して静かにしてくれ」
「や〜〜〜だ〜〜〜!へへ、私ね、感謝してるんだよ?先生のおかげで頑張れたんだし……」
「ありがたいけど、出来たら地上でそれ言って欲しかったな。こんなとこじゃなく」
「そんな怖いの?ねえ、先生?上見るんじゃなくて、目を閉じれば怖くないんじゃない?」
「あ、ああ……そうかもな。うん、確かにさっきよりマシだ。じゃあ、下に着いたら教えてくれ………」
"ちゅ"
「???え?ええええええええええええ?????」
「………私のファーストキスなんだから、もっとゆっくり味わってよ、もう!」
「じゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃ、そうじゃなくて!おい!」
「観覧車とキスってのは定番だよね〜〜〜へへ、少女マンガみたい……」
「あ……あのなあ……」
「ねえ、先生?先生は……私のこと、好き?」
「………好きとか嫌いとか、そういうのは……」
「嫌い?」
「………嫌いじゃないさ。好きだけど……6つも年が違うんだし、妹みたいなもん……」
「ヤダ」
「…………」
「このまま、会えなくなるのなんて、ヤダ。先生……好きです。付き合って下さい」
「……そんなこと言ってるけどな、そのうちお前にも同いどしくらいで好きな男の子が……」
「たった6つじゃん……それに、結婚するのも男の人が年上なのがほとんどだし」
「……そうかもだけど……」
「先生、彼女とかいないんでしょ?ねえ……お願い。私……私……」
「泣くなよ………あのな、本当に……良いのか?俺で?」
「ウン……先生が、好き。先生だけが、好き」
「…………知らねーぞ」
「……?」
「そのうち、お前に好きな男ができたとしたら、俺、結構未練たらしいから、
キレイに別れてなんて、やらねーぞ?まったく……なんでこんな男を好きになったんだか……」
「!……ってことは、先生、私のこと……」
「もう来年は就職活動だし、そんないっぱいお前に構ってやれねーけど。それでも、いいんだな?」
「はい!大好き!先生!」
「!#"」@=」&だ、だだだだだから、抱きつくなあ!!!!!!」
◆月☆日
………なんで先生は私に手を出してこないんだろう?もう付き合って3年もたつのに……変だ!
ショーコやマナカが言うには、男ってのはオサルさんで、付き合ってすぐに襲ってくるもんのはずなのに。
私に魅力が無い?結構胸だってあるし(アキには負けるけど)、それなりに可愛いほうだと思うけど……
でも明日はチャンス、と〜〜〜〜らいッ!!!!久々に先生とデート、
しかも仕送り直前の日だから多分すぐにアパートに行くはずだ。
得意の手料理と一緒に今度こそ私を頂いてもらうのだ!!!!大丈夫、
この日のためにカナミお勧めの超セクシー下着も準備したのだ。決戦は日曜日!!!!
「………それで、そのカナミってコにもらったんだな?」
「………ハイ」
「あのなあ………そういう男も世の中にいるかもしれないけど。
こんな真ん前に穴のあいた下着を見て、その気になる男はむしろ少数派だと思うぞ」
「……でもカナミが言うには、男がこの下着を装着した女の子を見れば、
百発百中ムッシュムラムラ状態だって……」
「……一応聞くが、そのカナミってコに彼氏はいるのか?」
「…………いない………」
「その時点で気づけ」
「…………ごめんなさい……でもそんな私魅力無い?先生?」
§
「………お前は十分可愛い。それは何度も俺が………」
「ならなんで手を出してこないの?結構誘ってるのに………」
「………あのなあ、そういうのは、お前に俺がキチンと責任を取れるようになってから……」
「もう責任取れるじゃん……あ、やっぱり先生、私とは遊びなんだ。結婚する気なんて……」
「そういう意味じゃなくて!そういう事するとな、100%じゃないけど、
妊娠の可能性があるってことはお前だって知ってるだろ?まだ18なんだし、
成績も悪くないんだし、進学とか考えたら………」
「………責任取って」
「は?」
「お願い。こんな好きなんだから、責任取って。私……先生の赤ちゃん、欲しい……」
「………俺の話聞いてなかったのか?だから、お前にはまだ未来があるんだから……」
「要らない」
「………」
「先生と一緒にいられないんなら、そんな未来……私、要らない。
お願い、先生……私……先生の、奥さんになりたい。」
「………いいのか?」
「うん……」
「?どうしたんだ、そんな古い日記見て………」
「懐かしくってさ、ふふ……あの頃は、ホントいろいろ面白かったよね、小久保先生!」
「???なんだよ、そんな昔の呼び名で……」
「あのときの初めてのセックスが正に大命中してできたのがマサヒコだもんね〜〜。
いや〜〜〜、感慨深いわ〜〜〜〜」
「………だから、大命中とか言うな」
「ふふふふ……ねえ、あなた?今日………いい?」
「………昨日したばっかだろ。まあ、いいけど……」
小久保家の夜は、こうして更けてゆくのであった………
END