作品名 作者名 カップリング
「1日限りの家庭教師」 ナット氏 -

その日、新学期が始まってすぐ行われたテストが返ってきた。
「うげっ、最悪・・・・」
数学の答案に書かれた赤い数字は47。クラスの平均は63だそうだ。

「はぁ、どうしよ〜〜・・・」
アキの家への足取りはとても重い。
夏休み終盤、親に「新学期始まってすぐテストなんだから勉強しなさい。」と耳にたこができるほど言われていたが、
宿題だけで手一杯。と、いうかその宿題もカナミのを写させてもらっていた。
疲れてくると、今日はおしまい、っと毎日のようにカナミたちと遊んでいた。
そのつけが今、回ってきたのだ。

「どーしよ〜〜、次テスト悪かったら小遣い減らすって脅されてたのに・・・」
ふと何か思いつく
思いふけりながら歩いていたら、いつの間にか家の前についていた。
扉がとてつもなく重く感じる。物音を立てないようにこっそり家へとあがる。

「アキ!!」
体がビクッとなる。怒鳴り声が上がったのはリビングからだ。
扉を開けると、アキ母がどーんとソファーに腰掛けている。
「た、ただいま〜〜・・・」
「テスト、出しなさい。」
「テ、テスト?まだ返ってきてないけど・・・」
アキ母は無言でアキを見つめる、というか睨む。
その迫力(プレッシャー)に負け、カバンから答案を取り出し、母へと渡す。

「はぁ・・・」
怒鳴られることを覚悟していたのだが、意外な反応を示した。
「あんた、あたしに似てほんっと勉強ダメね・・・」
「え、お母さんも馬鹿だったの?」
「親に向かって馬鹿とは何ですか!!」
アキの頭をはたく。そして一枚の広告を取り出した。
「いたた・・・  ・・・家庭教師?」
広告を見ると「いまなら無料おためし!合わなければキャンセルできます!!」
いかにも子供もちの主婦が食いつきそうな内容だ。
「あんたに家庭教師つけることにしました。」
「ええぇ!!」
「、といってもとりあえず無料の1回だけ。あんたが続けたければつづけるけど。
 それとも、今すぐ小遣い減らされたい?」
「ぐぐっ・・」
小遣い減額。これだけは避けたい。1週間だけ我慢して合わないといって止めさせようと思い、アキは家庭教師の話を承諾した。


それから数日後の放課後
「アキちゃーん、帰りにマック行こー!」
「ごめん、今日から家庭教師来るんだ。」

「「「ええ〜〜〜〜〜〜〜っっ!!」」」

カナミ、マナカ、ショーコが一斉に声を上げた。
「なんだよ!その驚き方は!!」
「あの勉強嫌いなアキさんが・・・」
「家庭教師!!」
「1回だけだよ。この間のテスト、悪かったから。」
「そっか、じゃあアキちゃん、私達は寄ってくから、勉強がんばれ〜〜〜」
「あんたら簡単に私の事見捨てるなよ・・・」

家に着き、部屋に戻り着替えをする。脱いだ制服をクローゼットに掛け、簡単に部屋の掃除をする。
「そろそろ来るかな〜〜」
ピンポーン
呼び鈴が鳴り、母娘で玄関へ出迎える。
扉を開けると、ゆったりとした服を着た女性が立っていた。
 「はじめまして。本日、アキさんの家庭教師を勤めさせていただく濱中アイです。よろしくお願いします。」
アイを家へと上げ、リビングへと案内する。

「へ〜、アイさんは東栄大学の生徒さんなんですか。優秀なんですね〜。」
「いえいえ、そんなこと無いですよ。」
自己紹介がてら出されたケーキを食べていく。
時間にしたら数分のことだが、瞬く間に皿の上のケーキは消えていった。
「それじゃあ、そろそろ授業のほう、始めましょうか。」
「あ、はい。おねがいします。」



「うーん、テスト見せてもらったけどちょっとひどいかなぁ」
「す、すいません・・・」
だから家庭教師を頼んだんですけど。そんなことを内心思いながらまだ突っ込むとこじゃないと冷静に判断。
「じゃあ一番悪い数学やろっか。教科書出して。」
「あ、はい。」
机から数学の教科書を取り出し、アイに見せる。
ページをぱらぱら開きながら内容を確認する。
(え、こんなの私やったっけ?)
開いているページには見覚えはあるような無いような数式が並ぶ。
いまさらになってアイは思い出した。自分が高校のころ、数学などの理数科目が苦手だったことを。
額に汗が浮かび、血の気が引いていく。
「? 先生、どうかしました?」
「え! あ、い、いや、なんでもないよ。えーっと、えーっと・・・」
家庭教師とはいえ、先生として「わからないから科目変えよう。」とはいえない。
だが教えれないのはもっとまずい。
そう思いながら教科書とテストを見比べ似た問題を探す。
「じゃ、じゃあこの問題解いてみて」
「あ、はい。わかりました。」

アキがノートに問題をやっている間、何とか自分でもやってみる。
(えっと、まずどうやるんだっけ?)
やろうにもまず手がかりがわからない。あーしてみる、こーしてみると試行錯誤するが解答にたどり着かない。
(普段中学生の先生だしなぁ・・・)
とうとう心の中で塾に愚痴をこぼし始める。
ここでチラッとアキのノートを見た。シャープペンシルがトントンとつついた点以外真っ白だった。
(うう〜、ぜんぜん解らん・・・ 「まず何すればいいんですか?」なんて聞くの恥ずかしいし・・・)

アイはこのチャンスを見逃さなかった。
「アキちゃん、ぜんぜん解けてないねぇ。じゃあまず基本からやろう。問題集出して。」
問題集なら解答が載っている。なら何とかなるだろう。そう判断したのだ。


問題集が取り出され、最後のほうの解答を見る。
解答は載っていた。だが途中式は載っていなかった。あくまで「答え」だ。

アイは焦ったが、問題を見てみたらテストの範囲になっていたとこで、最も基本的なとこは何とか教えられそうなのに気付いた。
「じゃあA問題の1と2やってみよっか。」
アキは問題をとき始めた。途中何度かアイに質問したが、アイはなんとか答えることができた。
「・・・・というふうになるから、ここがこうなって・・・・・」
「ああ、なるほど。」
アキに教えつつ、アイも少しずつだが思い出してきた。

アキが問題すべてを解き終ったころ、残り時間は10分程度になった。
「あと10分か。じゃあ最後にこのBの5番やってみよっか。」
思い出してきて自信を付け始めたアイは応用問題を解くよう命じた。
アキが解き始め、アイも解き始める。
はじめの数行は解けていったが、途中で詰まってしまった。
(あれ?なんでこうなるの?)
途中計算が間違ってないか確認するが、間違ってはなさそう。
思い出してきたうろ覚えな別の数式を当てはめてみて無理やり解いてみる。
が、出てきた答えはめちゃくちゃで、解答を見てみるが、やはり見当違いな答えだ。
(どうやったら答えこうなるの?)

頭を抱えて悩んでいるときだった。
「あの、先生・・・」
「え、あ、はい!?」
「解けたんですけど、間違ってます?どうも自信なくて・・・」
アキのノートを見て答えを確認する。が、符号やXの係数など微妙に違う。
だがどこで間違ったのかがわからない。
「うーん、おしいなぁ。ちょっと違う。」
「え、やっぱり・・・ どこで間違ってますか?」
「え゛!?」
アキの解法をじっと睨む。
「なるほど、こうやって解くのかぁ。」
「え?」
「い、いや、なんでもないよ。」



必死でアキのノートを見つめるアイ。
その間アキはアイのメモ用紙みたいなのを見た。
この問題を解いてるようだが、なにか見当違いな答えになってるのを発見した。
「あの、先生。先生もしかして答えわからない?」
「し、しつれいな!これは、えーっと、アキちゃんがどこで間違えたか探してるんです!!」
「す、すいません」
ずーとアキの答えをみていくと、途中で計算が間違ってることに気付いた。
「こ、ここよ。ここの計算が間違ってるのよ。」
「え、ああ、ほんとだ。」
じゃあ、ここからやり直してみて。
後半部分を消し、やり直してみると、今度は解答どうりの答えになった。

「やっと解けたーーー。」
「ふー、おつかれさま。」
時計に目をやると終了予定時刻を大きく越え、次の子のはじめるぎりぎりになっていた。
「ま、まずい!もうこんな時間!じゃあ、今日はお疲れ様!!」
あわただしく荷物をまとめ、部屋を飛び出していった。
「え、おつかれさまでした・・・」
言い終わるころには玄関の戸が開く音がした。

次の子の家に着き、階段を駆け上がり、勢いよく扉を開けた。
「ごめん、マサヒロ君、遅刻しちゃって・・・」
「いや、別にいいですよ。 とりあえず落ち着いてください。」
走ってきたのだろう、アイは荒く息を上げ、汗をだらだらと流していた。
「息荒くなって・・・ 汗かいてるけど・・・ はぁはぁ・・・ 別にえっちなことしてたわけじゃないよ。」
「いや、わかってますから・・・」
「と、とりあえず、 水ちょうだい・・・」
マサヒロが水を持ってきて、それを一気に飲み干し、時間がだいぶ押してしまったが授業が始まった。」
「ねえ、マサヒロ君。君は高校いっても家庭教師続ける?」
「さぁ、どうかは解りませんが、アイ先生ならつづけたいかな・・・」
「えっ・・」
少年の言葉は、少々ショタ好きな彼女をドキッとさせた。
「あ、別に深い意味は無いですよ。アイ先生ならやりやすいかなって意味で」
「え、そ、そうだよね。」
その一言はちょっとした残念感と、あんな難しい問題教えなきゃいけないのかという不安感をつのらせた。


そのころ矢野家
「先生、なんか急いで出てっちゃったけど・・・」
「ああ、なんか時間が予定より過ぎちゃって。」
「あんたが馬鹿だから?」
「超なんだと!」
アイに出すはずだったお菓子を食べながら家庭教師どうするか話し合っていた
「で、どうする?家庭教師?」
「うーん、なんか怪しい感じだったし・・」
「あやしい?」
「うん、なんか問題わからないって感じだった。止めたほうがよさそう」
「そう。じゃあ、小遣い減額ね。」
「そんなーーー!」
「じゃあ、次のテスト、クラスの1番になれとは言わないから全教科平均点以上!これが最後だからね。」
「うぅ〜〜、ありがとうございます〜〜〜」

部屋に戻ると机の上にアイが忘れていったメモ用紙が残っていた。
見てみると、見たことの無い公式で解かれ、めちゃくちゃな答えになっていた。
その公式を調べてみるが、似た公式はあったが、微妙に違う。
翌日カナミなど秀才組に見せてみたら、
「公式間違って覚えてたんじゃない?」
「これなら家庭教師やら無くて正解だったかも」
と言われたい放題言われていたが、その公式を作り出した張本人の耳に入ることは無かった。

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