作品名 |
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カップリング |
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ピンキリ氏 |
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薄暗い地下室に、三人の女性が閉じ込められていた。
濱中アイ。
矢野アキ。
今岡ナツミ。
彼女たちが何故ここに放り込まれているかはわからない。
彼女たちにもわからない。
気がついたら、ここに倒れていたのだ。
「えーっと、その、はじめまして」
「…はじめまして」
「…こちらこそ」
とりあえず、挨拶と自己紹介なんぞをしてみる三人。
状況が一もニもわからないのだから、それ以外にすることは無いのだ。
「で、ここはどこでしょう」
「…さぁ」
「なんでここにいるんでしょう」
「…はて」
だから、それは話し合ってもわからないんだってばさ。
陽の光も差さない、時間もわからない。
冷たい石の床、壁、そして鉄の扉。
ただ三人は呆然とするしかなかった。
と、不意に鉄扉が開いた。
外からの光に、三人は目を思わず細める。
「あーっはっはっは!」
「オーホホホホ!」
笑い声とともに、女性が二人部屋に入ってきた。
「な、その声は?」
「先輩!」
「マリア先生!」
そう、部屋に入って、と言うより乱入してきたのは、
アイの大学の先輩中村リョーコと、
アキとナツミの高校の教師、マリア・ルーズベルトだった。
三人は絶句した。
そりゃするだろう。
何しろ、リョーコとマリアの格好は、
「女王様!」と叫びたくなるようなどぎついボンテージルックだったからだ。
「アイ!」
「は、はい!」
「私の苗字、中村は何の中村か言ってみろ!」
「は、へ、そ、その、元近鉄のスラッガrftgyふじこlp;@」
最後まで言い終わらないうちに、
リョーコの投げたスライム(緑色のねちょっとしたおもちゃのアレだ)が、アイの顔面を直撃した。
「違ーう!元阪神監督、オリックスの来期監督中村勝広の中村だぁ!」
「ふっ、ふがくく」
リョーコはそう言うと、手にした鞭をパーンと床にたたきつけて鳴らした。
「さテ、私のナマエをもう一度イッテくだサイ、今岡サンに矢野サン」
「え、マリア・ルーズベルトせんせ、むっ、ぐぐぐ」
これまた最後までアキが言い終わらないうちに、マリアは唇を重ねて言葉を塞いだ。
そのままたっぷり一分間は口内を蹂躙していく。
「ぷフゥ。それは現世での仮のナマエデス。私のホントーのナマエは…」
「な、名前は?」
卒倒寸前のアキを介抱しつつ、ナツミが尋ねた。
「マリア・バッキー・カークランド・ラインバック・ブレイザー・バース・キーオ・ゲイル・オマリー・
パチョレック・グリーンウェル・リベラ・ムーア・アリアス・シーツ・ルーズベルトなのデース!」
「な、長っ!」
「文句言う口はコノ口デスかー!アナタもこうしてアゲマス、えぃ!」
「む、ぬ、むむむむぅ」
ナツミの唇に強引に吸い付くと、アキの時と同じように、舌を使って徹底的に口内を責めていくマリア。
エネルギーを奪われたように、ナツミが一瞬でくたくたっとなる。
「さて、アイ」
「サテ、矢野サン今岡サン」
「「ここに閉じ込められた理由、わかるわよね?」」
先述したが、三人にわかるわけがない。
「わかりません」
「…わ、私も」
「…右に同じく…」
三人の答を聞いて、リョーコとマリアははーっと大きくため息をついた。
「情けナイ…」
「あんたら、苗字は何だ?」
「え、濱中です」
「矢野です…」
「い、今岡です」
リョーコとマリアの迫力に押されて、尻餅をついて怯えるアイ、アキ、ナツミ。
「そう、それ、その苗字が理由だ!閉じ込められた!」
「それが理由なのデース!」
「えええええええええ?」
「な、何ですか、それ?」
「まったく意味不明です!」
いくらギャーギャー叫ぼうと、リョーコとマリアに通じるはずも無し。
「ふふふ、黙れ黙れ三人とも。抵抗しても無駄よ、ここはアンタたちが住んでるところとは全く次元の違う世界だから」
「そう、強いてセツメイするナラ、現世と夢幻世界のハザマといったトコロデス」
そんなん理解できるはずがない。
「先輩、ぜんっぜんわかりませーん!」
「うるさい!ここではアンタたちは無力!ただの雌なのよ!」
「メ、メスぅぅ!?」
「そうデス!これでもクライなサーイ!妄想ダイナマイ光線!ビビビビビ」
「「「ぎゃあぁぁぁあああ」」」
ああ、何と恐ろしいことであろうか。
三人の衣服がたちまちのうちに破れていく。
「いやーっ!!」
「あ、ああ、やめてー!!」
「ダメーッ!!」
三人の悲鳴虚しく、衣服は糸くず一本残さず消滅してしまった。
「さぁ、これから懲罰の時間よ!」
「おしおきタイムデース!!」
「やめてください先輩、正気に戻って!」
「あらぁ、私は正気よ?アイ、アンタがおかしいんじゃない?」
「マ、マリア先生、私、そのケはありませーん!」
「いやぁぁぁ、助けてぇぇ」
「ウフフフ、叫んでもムダデース」
三人は胸と局部を庇うように手でおおい、悪女二人から逃げるように部屋の隅へと寄った。
「さぁて、本来なら私たちがズバーッと唐竹割りに両断してやるところなんだけど」
「アナタタチのアイテは別にイマース」
「え、え?」
「さぁ、入っといで!」
アイ、アキ、ナツミの三人は、リョーコが指差した鉄扉の方を見た。
そして、驚愕した。
「ああ、ああ、マ、マサヒコ君!」
「お、お兄さん!?」
「カズヤ!?」
そう、そこに居たのは、小久保マサヒコ、城島シンジ、新井カズヤ、彼女たちがよく知る男性たちだった。
しかし、彼らはまるでロボットのように無表情で、暗い雰囲気を漂わせていた。
三人は思わず目を背けた。
その雰囲気が嫌だったからではない。
男性たちが、全裸だったからだ。
「さぁ、言っておやり、アンタたち!」
「ビシッとバシッとガシッとイッテやるのデース!」
まず、マサヒコがアイの前に進み出た。
「先生……ここ一番で役に立ってこそ……チームの顔ですよね……」
「いやぁぁぁぁ、な、何か心にグサッとくるぅぅぅぅぅ」
続いてシンジ。
「矢野ちゃん……捕手が弱気になってどうするの……逃げる球より、内角、内角にズバッとだよ……?」
「ひぃあぁぁぁ、む、胸が痛いぃぃぃぃ」
そして最後にカズヤ。
「ふへへへ……今岡……短期決戦では、打点よりやっぱ、本塁打だよなぁ……」
「うぅぅぅぅぅぅ、カ、カズヤに言い負かされたぁぁぁぁ」
じり、じりとそれぞれの相手に近寄っていく三人の男性。
「さぁ、アンタたち、そのバットでおしおきしてやりな!」
リョーコの掛け声とともに、マサヒコ、シンジ、カズヤの股間がむくむくと大きくなっていき―――
ぎ ゃ ぁ ぁ あ ぁ あ ぁ ぁ ぁ ぁ あ !
人が発する最大限の大声で、アイとアキ、ナツミは叫んだ。
「……という夢を見たんですよ」
「……」
ここはひだまり幼稚園。
園児たちは全員帰宅し、園内に残っているのは職員だけだ。
そして、ガランとしたひまわり組の部屋では、二人の女性が向かいあって会話をしていた。
いや、会話ではない。一方的に片方が喋り続けていた。
「宮本先生、聞いてます?私、今まで淫夢なんて見なかったんですよ」
「……」
「だって、現実で発散しますからね、私は」
「……」
「で、昨日突然、さっき話したような夢を見たんですよ。出てきた人物も誰が誰かわかんないし」
「……」
「私、疲れてるんでしょうかね?病院行った方が?」
行け、とっとと精神科へ……とは、宮本レイコは言わなかった。
あまりにあまりな話の内容に、言う気すら起きなかった。
彼女が口にしたのは、別のことだった。
「佐々岡先生、いいですか」
「はい、何でしょう」
「今日は何の日だったですか?」
「はい、卒園式の日でした」
宮本レイコはゆっくりと席を立った。
佐々岡アヤは、気にした風もなくお茶をズズズとすすっている。
「つまり、今年度は今日で終わりです」
「……そうですね」
「明日からは、来年度のことを考えなければいけません」
「そうですね」
「気合を入れなおすべきだとは思いませんか?」
「そうですね」
「コラ、アンタ真面目に聞いてんのか」
「そうですね」
宮本レイコは、手にしたボールペンを投げつけたい衝動を必死に堪えた。
「……もういい。私は帰ります」
「あ、宮本先生」
「……ん?」
「おっしゃる通りです、気合を入れなおします」
なんだ、ちゃんと聞いてたのか。
そう思い、宮本レイコは少し安心した。
「いい方法があるんです。かなり極太でイボつきで、振動が激しいヤツがありまして、これを入れると気合がイテッ!」
ボールペンが佐々岡アヤの額に当たり、大きく跳ね返った。
「あいてててて、ひ、ヒドイですよ宮本先生」
「 う る さ い ! 」
宮本レイコは怒鳴ると、ドスドスと足音を立てて佐々岡アヤの前から立ち去った。
「あー、宮本先生、ウソですウソ、ほら、クールミントガムあげますから、機嫌直してくださいよー」
その後を、佐々岡アヤは慌てて追いかけた。
クールミントガムを持って。
終 わ り