作品名 作者名 カップリング
No Title 雷電氏 -

「アキさん…」
「なにマナカ?」
暗いマナカの部屋、月の光がカーテンに遮られながらも隙間から降り注がれる





「私、百合かも知れません!」
「はっ?…あっそ」
「信じてませんね」
アキは相手にするのが煩わしくなり寝ようとする
何故このような事になったのかとアキは考える
それは今日の事だった…

「カナミちゃんとショーコさんはお休みですか?」
「うん、風邪だってさ。ショーコは違うと思うけど」「そうですか…」
マナカは悲しそうに下を向く
「どうかした?」
困っている友人に声をかけたのが始まりだったのだ


「実は…」
いつもの落ち着いたマナカの顔はそこにはなく、何かに恐怖するかのように脅えていた





アキも尋常ではない様子に息を飲み口が開くのを待つ
「今日一人なんです」
「…んっ?」
「家には誰もいないんです!」
アキは頭の中を整理し、聞く
「一人で留守番?」
「はいっ!」
「どこに困る理由が?」
「一人なんですよ!両親は弟か妹を作る為に旅行、兄は合コン三昧で!私怖いんです!」
泣きそうな顔でアキに詰め寄る
(ヤバイ…マジだ!)
アキは戸惑いながら再び口を開いた
「カナミとかいたらどうする気だったの?」


「泊まりに来てほしいと頼みたくて、…あっアキさん今日は?」
マナカは身近にいる目標に気付いた





「私は…、今日は…無理…かな」
予定は全く無い
しかしマナカの横で静かに寝る事は出来ないと解っていた
(鶏と寝るほうがまだ寝られるわ)
そう思いアキはマナカに顔を向けると
「うっ…、ぐすっ。アキさんしか…頼める人…いないんです」
泣いてアキを見ていた!
「ちょっ、マナカ?」
教室で泣き出すマナカにクラス中が集中する
「アキ…さん!」
そしてクラスの視線はアキに向けられる
「ちょっ、私が泣かせた訳じゃ!」


何が起こっているのか解らない人にはアキがマナカを泣かせたとしか写らなかった





「お願…いします」
泣きながら再び頼みだす
(まさか計算?私が泣きたいわ…)
アキは負けを認める
「解ったわよ、泊まりに行くわよ」
「本当ですか!」
そこには先程まで本当に泣いていたとは思えない笑顔の眩しいマナカがいた
(…やっぱり計算か)
アキはうなだれしかなかった


(そうよ、このせいよ)
回想を終えアキは悲しくなる
AM2時
未だにマナカはアキを寝かせずにいた
アキも覚悟していたとはいえ、想像以上の仕打ちであった


「アキさん」
「……」
(シカトよ、答えるからマナカは調子に乗るんだ)





「寝たんですか?」
「……」
(とっとと寝なさいよ)
アキはとにかく寝たふりをする
すると床に敷かれたアキの寝る布団の中に何かが入ってくる
(まっ、まさか?)
うっすら目を開け確かめると予想通りマナカが入ってきていた
(駄目!ここで反応したら思う壷だ)
心の中で言い聞かせ、ひたすら寝たふりをした
「アキさん、…本当に寝たんですか?」
マナカの寂しそうな声がアキの心を切なくする
(頼むから気持ちよく朝を迎える為に寝かせて!)


アキの切実な思いを打ち砕くかのようにマナカは一人喋りだす





「アキさん男の子っぽいですよね」
(今度は私の神経逆なでして起こす気?)
アキは平常心を保つ為に呼吸を深くする
「私本当に百合かもしれません、いつもアキさんを目で追うんです」
「……」
「今日もアキさんが泊まりに来る事になってドキドキしてるんです」
(無理矢理来させて何言ってるの!)
「私が描く理想の男性像はアキさんそのまま何です」
(…いつか殴ってやる)
「好きですよアキさん…好意ではなく愛情で」
(マナカ…あんたどこまで頑張るの?)


アキは目を閉じているので気付いていなかった
マナカの潤んだ瞳に





「……」
(ん?やっと諦めたか)
アキがそう思った矢先、温かいものがそっとアキの唇をふさぐ
(な、なに!?)
うっすら目を開けるとマナカの閉じた目が写る
(えっ?って事は、この温かいものはマナカの唇!)
とにかく考えた
(そこまでして私を起こす気か!?)
「…アキさんの唇柔らかくて虜になりそうです」
マナカは顔を離し呟く
(…もうツッコミたい!)我慢に限界が近いのか体中がこそばゆい
そんな事は知らずマナカは再び頬に手を添え唇を重ねた


(もう無理!)
アキは限界だった
目を開きマナカの瞳を見つめる





「ア、アキさん!」
マナカは慌てて顔を離した
(いつもボケられてるし、今日は私が!)
「マナカ、気持ちに気付いてあげられなくてごめんね。私も…マナカの事」
(私がボケてやる!マナカがひくぐらい!)
しかしアキの想いと裏腹にマナカは暴走する
「アキさん…私…嬉しい…です」
マナカは涙を潤ませる
「えっ?…あっ」
(マジなの?それとものってるの?)
「アキさん!」
言葉と共にアキを抱きしめる
頬をぴったりとくっつけ胸も柔らかく押し合う


二人の鼓動と吐息が新しい音をつくり静かに部屋に響く





「マ、マナカ?」
「アキさん、私を受け入れてくれて嬉しいです」
「……」
(マジだったんだ!悪のりとかじゃない!)
「二人で気持ちよくなりましょう」
(イヤ〜!助けて!)
マナカの吐息が耳にふれ恐怖に怯える

その時マナカの部屋が開く「マナカ、さっきから何言って…」
「に、兄さん!何故いるんです!」
マナカの兄という男性が部屋に入ってくる
しかしこの光景を目の当たりにし止まる
「あっ、あの〜」
アキが静寂を嫌い喋ろうとすると兄が慌て喋りだす


「合コン4回する筈だったんだが…相手の都合が悪くなって2回しか出来なくて今帰ってきたんだ」





マナカは不機嫌そうな顔で兄を睨む
「空気を読んで下さい!」
「悪い…」
「だから兄さんは!」
「本当に悪い!」
マナカは立ちあがり兄に詰め寄る
アキの目には兄妹喧嘩ではなく兄いびりにしか見えなかった
(どこの家庭も…兄は妹に勝てな…いんだ。助…かったん…だ私…)
マナカの怒声、兄の許しをこう声がアキを眠りへと誘う


「アキさん!」
「んっ?」
「もう朝ですよ」
「ん〜!」
マナカに起こされアキは目を覚ます


朝日に顔を照らされ体を起こす
すると床でぐったりと眠る兄がアキの目に入る





「マナカいつまで喧嘩を?」
「ついさっきまで」
「そう、だからこんなにやつれて」
アキは兄を憐れみの目で見る
「アキさん、今日は邪魔者が表れましたが、アキさんの気持ちが聞けて私幸せです!」
満面の笑みをアキに向ける「……」
(夜中の出来事はやっぱり本当なんだ…あ〜どうしよう)
考え込むアキをマナカはうっとりと幸せそうに見つめていた

その日からカナミ等がアキに話しかけると必ずマナカが横に立ち悪い虫がつかないように頑張っていた

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