作品名 作者名 カップリング
「コタツの中の夢幻世界」 トマソン氏 -


(うおっ、すごい行列……)
 2006年の元旦。シンジは一人、近所の神社に初詣に来ていた。
カナミはマナカやアキ達と連れ立って少し遠い有名な寺に行ったため、近場で済ませた
いシンジは一人、人ごみの中に身を投じていたわけである。

 それにしてもすごい賑わいだ。出店もたくさん出ているし、参拝客の行列もずらりと
並んでいて、本殿目指してゆっくりと進む、というより行列の中に身を置いて流されて
いくのが精一杯だ。
 ようやくのことで本殿にたどりついたシンジ。賽銭を投げ、カランカランと鐘を鳴ら
して両手を合わせる。
(一家安泰、学業成就、健康、それと、無駄にエロい妹が普通になりますように……)
 最後の願い事がシンジらしい特殊事情ではある。
さて、後ろにも人がずらりと並んでいる。シンジはお祈りは早々に切り上げ、帰る人の
列に加わった。

 そのころ、本殿へ向かう列の中に栗色のロングヘアの少女が一人いた。
(お祈りすることは……今年こそ先輩が、私の気持ちに気づいてくれますように……)
そんな願い事を心の中で繰り返しながら、本殿へ次第に近づく。
 その矢先、反対側の列に憧れの男性たるシンジを見つけ、少女の心が跳ね上がった。
(あ、あれは先輩……チャンス! この流れを利用してぶつかって……わああっ?!)
とまあ、シンジに接近しようとして人ごみに流されていったいたいけな少女がいたの
だが、当のシンジは知る由もなかった。

 帰り道を歩くシンジの鼻を、そこはかとなく甘い匂いがくすぐった。見ると、参道の
傍らの建物に、赤い袴の巫女さんが数人詰めており、参拝客に甘酒を振舞っている。
(お、甘酒はサービスか……体も冷えてるし、飲んでいくか……)
と、シンジはそこへ向かった。
 ここも人が多いが、初詣客の行列よりはましだ。甘い香りのする紙コップを受け取り
口へ運ぼうとするシンジだったが、体を向き直った瞬間、人ごみの中にひときわ目立つ
長身の女の子を目にして手を止めた。
 ボーイッシュな顔立ち、太めの眉毛。ジャンパーにトレパン姿で、腰に手を当て、甘
酒を一気に飲み干す豪快な飲みっぷり。なんと、ご存知のピュアピュア娘、金城カオル。
「そんなに飲んで大丈夫ですか?」
 巫女さんの心配も何のその、お代わりを手にするカオル。
「えへへ、おいしゅしいもん。じゃいじょーびゅ、じゃいじょーびゅ」
 大丈夫と言いたいのだろうが呂律が回っていない。




 その姿にびっくりしていたシンジだったが、ついカオルと目が合ってしまった。
これでは他人の振りをするわけにもいかない。
「か、カオルちゃん? 珍しいところで会うね」
「あ、シンジしゃん。あけましゅておめでとうごじゃいま〜す」
「あけましておめでとう……って、ちょっと飲みすぎじゃないか?」
「え〜酔ってましぇんよ〜まだまだこれからじぇしゅ〜」
 シンジは、カオルとは夏に一緒に海に行ったくらいで、さほど親しいわけではない。
 あの時は声をかけるだけでカオルのほうが顔を赤らめてしまい、ウブな娘だな、位に
しか思わなかったが、アルコールにぽっと頬を染め、トロンとした目をしているところ
は結構ドキドキものだ。というか、この娘が酔っ払うというのが信じられない。
「カオルちゃん、お酒好きなの?」
「普段は飲まないけじょ、甘酒はおいしゅいでしゅね〜」
そんなやり取りをしているところに、巫女さんの一人がシンジに声をかけてきた。
「あの、お知り合いですか?」
「? ああ、まあ……」
「それじゃ、お願いが……この人を家まで送っていただけませんか。もう甘酒を八杯も
飲んでしまって、ご覧のとおりの有様で……」
「どんにゃありしゃまだよ〜、酔ってなんかにゃいじょ〜」
 酔っ払いカオルが絡んでくるのは無視して、シンジと巫女さんの話は続く。
「でも、住所を知らないので……」
「あ、私、この人と同じ高校に通っているんです。住所は……えっと、これです」
 どうやらこの巫女さんは、紅白百合女学院に通うカオルの同級生らしい。普段から凛々
しいカオルに憧れていた彼女、巫女さんのアルバイトをしているところにカオルが初詣
に来て、つい飲ませたはいいが、カオルのほうが酔ってしまったわけだ。

てなわけで、巫女さんがカオルの住所をさらさらと書き付けたメモを受け取り、カオル
を連れて帰ることになったシンジ。ひょいとカオルの腕を取る。
「さ、帰ろうカオルちゃん」
「え〜もうじょっと、飲みたいにょ〜」
「おうちに帰ってお屠蘇を飲もうよ、うん」
 とにかく家に送って、親御さんに引き渡せば用は済む。シンジのこの考えは少々、
甘かったのだが、神ならぬシンジには分かるはずもなかった。




 金城邸はさして遠くなかった。シンジはふらつくカオルに肩を貸し、
「えへへ〜シンジしゃん、早く帰って飲みましょ〜」
などとからんでくるカオルを支えつつ、カオルの自宅に到着した。
 呼び鈴を鳴らそうと手を伸ばすと、カオルがそれを止める。
「私の家なんじぇすから〜、遠慮はいりましぇんよ〜、さあ」
と、ふらつきながらドアを開けて家に入っていくカオル。
「それじゃ俺はこれで……て、ちょっとカオルちゃん」
「じゃめれすよ〜一緒に飲みゅんでじょ〜」
 カオルが腕を離してくれないため、シンジもやむを得ず金城邸に入り込んでしまった。
「たらいま〜」
「お邪魔します……」
 酒臭い娘と、若い男性を迎え、台所から出てきたカオルの母親は目を丸くした。いか
にもカオルの母親らしい飾り気のない、実直そうな女性だが、少々早とちりらしい。
「こんにちは、実は……」
 シンジが訳を説明しようとするが、カオルママは聞いちゃいない。
「まあまあまあ。ウチの娘が男の子を連れてくるなんて大変大変。今夜はお赤飯炊かな
くちゃ〜」
 事情も聞かずにこのノリ。まあ、確かにあのウブなカオルが男をいきなり連れてきた
ら驚くだろうが。
(こんな感じの母親がこの前読んだ漫画に出てきたよな……)などとつまらないことを
思い出すシンジをよそに、カオルママは財布を手にコートを着込む。
「今夜はご馳走作りますから、お買い物に行ってきます。三時間くらいは家を空けます
から、その間はしっぽり、いや、しっかり留守を頼みますね」
「あ、あのお母さん……」
「あら、お義母さんだなんて」
(やっぱり、あの漫画に出てきた母親そっくりだ……たしか、何とか家庭教師、何とか
アイ……だったっけ?)
 シンジの抗議などどこ吹く風、カオルママはウインクを残して出て行き、カオルが
シンジの腕を引っ張ってコタツへ座らせる。
 ご丁寧にコタツの上にはみかんの山と、お屠蘇に日本酒まで用意されていた。
「えへへ〜、さあシンジしゃん飲みましょ〜」
(まいったな……)
 少々困惑するシンジだったが、ポッと顔を染めたカオルに杯を差し出されてはもはや
逃げられそうにない。さっき腕をつかまれた感触では、腕力ではカオルのほうが強そう
ですらある。
(俺も、体鍛えたほうがいいかなあ……?)
 男として少々情けない感想だが、ともかくそんなことを考えても状況は変わりそうに
ない。シンジは杯を受け取り、甘いお屠蘇をごくっと飲み込んだ。
「わ〜、いい飲みっぷりでしゅね〜私にも〜」
 カオルもまた杯をシンジに差しだし、酒を注ぐようトロンとした目で催促する。
「カオルちゃん……あの、控え目にね……」
 しょうがない、少々付き合うか。シンジはお屠蘇の容器を手にした。



「えへへ〜、しゃあシンジしゃん」
 カオルが日本酒のお銚子を持ち、シンジの杯に注ぐ。金城邸で飲み始めた二人は既に
お屠蘇をきれいに空にして、日本酒を飲み始めていた。カオルはもういい加減に酔っ払
い、顔が真っ赤だ。シンジもほんのり顔が赤くなりつつある。
 さらに、アルコールに加えもうひとつの刺激がシンジを襲っていた。
「あ、あのさカオルちゃん……脚がさ」
 シンジとカオルは居間にある小さなコタツに向かい合って座っていた。コタツ布団の
中で二人の足が絡み合い、ジャージとジーパン越しにむっちりしたカオルの太股を感じ
て、シンジは少々居心地がわる……いや悪いわけではない、むしろ気持ちいいのだが、
思春期の男にはちょっと刺激が強い。
(というか、この脚の格好はどこかで……あ……)
 この絡み具合は、先日妹のカナミに教えられたあれと同じだ。
(確か、コタツ隠れ……だったかな。こんなんじゃ挿れられないだろうに。コタツが邪
魔で接近もしにくいし、無理やり接近したら角度が合わねえし)
 それ以前に、どうしてこんな知識を妹に教えられなきゃならんのかを突っ込むところ
なのだが、さすがのシンジも、もはや麻痺したか。
「脚なんかどうでもいいでしゅ〜、さあ、飲みまじょ〜」
 カオルの圧力に耐え切れず、杯を口に運ぶシンジ。二人のどちらかが身動きするたび
にシンジの脚とカオルの脚とがかすかにこすり合わされ、暖かい摩擦がシンジをくすぐ
る。トロンとした目をしたカオルと脚を絡め合わせて酒を飲んでいるうちに、シンジも
だんだん怪しい気分になってきたりして。
「しゃあ、私にも〜」
 カオルが空の杯を差し出す。シンジがそれに控えめに酒を注ぐと、カオルはそれを
グイと一気に飲み干してしまった。
「あの、カオルちゃん……ほどほどに……」
「えへへ〜シンジしゃん、私ってずっと女子高だったきゃら、あんみゃり男の人と話し
たことなくって……父さん以外の男の人とおしゃけ飲むの、初めてなんでしゅよ〜」
 高校一年のくせに酒を飲むのが問題という意識はないらしい。いやそれより、父親と
は一緒に飲んでるのか?
「ハハ、そうなんだ」
 というか、シンジも未成年なのだが。
「あ、そーだ。シンジしゃん、ひとつお願い聞いてもらえましゅ?」
「ん? なんだい?」
 カオルは何を思ったか、さらさらとメモ用紙に何かを書き付けると、それをシンジに
渡した。
「このシェリフ、私にしゃしゃやいてくだしゃ〜い」
「……これは?」
(『いつまでも変わらないキミでいて』? なんだ、こりゃ)
 シンジがメモ用紙を見ると、そんなキザな台詞が書かれていた。アルコールで真っ赤
な顔をさらに赤くして、カオルがテレテレしながら話を続ける。
「えへへ……私、あんまり男の人と話しゅたことなくて、こんな台詞をしゃしゃやいて
もらうのをいつも夢見てるんでしゅ」
 ちなみにカオルが心の中でこういうシーンを夢見るとき、男性のモデルは常にシンジ
である。というか、ほかに年頃の男性の知り合いがいないというのが真相だ。それはそ
れで非常に情けない事態ではあるのだが、今はこの酔っぱらいの話を続けよう。
「だかりゃお願いでしゅ、私の夢、ひとつだけかなえてくだしゃ〜い」
(ふーん、女の子らしい頼みだな。まあ、これ位ならいいか……『愛してる』とか、
『結婚してくれ』とかだったら考えちゃうけど)
 と、シンジも割と軽い気持ちでリクエストに応じてしまった。
 ぽーっとした表情をしているカオルの、ほんのりと上気した耳にシンジが顔を寄せ、
やさしく囁く。
「いつまでも変わらないキミでいて」
 ばったーん。
 カオルはその台詞に天にも昇りそうな表情になったかと思うと、一瞬のちには後ろに
ぶっ倒れた。




「え?! カオルちゃん?!」
 さすがのシンジも少々慌てたが、カオルの気を失いながらも幸せそうな表情を見て、
ようやく得心した。
 この娘のピュアぶりからして、刺激が強すぎて卒倒しただけだろう。頭は座布団の上
に落ちたし、怪我はしていないはずだ。
(なんというか……リクエストしてきたのはこの娘だし、自爆……だよな)
 とりあえず自分に非はないはずだ。シンジはちょっと気を楽にした。
(でも、このままではカオルちゃん、風邪引きそうだよな。何か、毛布でもかけてやら
ないと……あ、あれ?)
 コタツから這い出ようとしたシンジだが、カオルと脚が絡まって思うに任せない。
 力任せに脚を引き抜くと……ずるり。
「……え」
 シンジの脚はコタツから抜け出たが、今の、何かを引きずったような感触は一体? 
 彼は思考を巡らせた。アルコールが染み込んだ脳みそで回転が鈍いが、一歩一歩、
推測が進む。

その1。カオルちゃんはトレパンを穿いていた。
その2。トレパンといえば、腰はゴムで止まっているのみ。
その3。絡みついた脚を強引に抜いた結果、何かを引きずった感触がした。
結論。 カオルちゃんのトレパンを俺が引きずり下ろした。

(……や、やばい!)
さすがのシンジも動揺しまくった。
(えーと……どうしよう)
 どうするといっても、このままではどう誤解されても言い訳は利かない。もう一度、
穿かせるよりないだろう。
 (仕方ない……よな、これは。カオルちゃんはよく寝てる……)
 くか〜、すぴ〜。
 カオルはもう安らかな寝息を立てていた。
 それを確認したシンジは、もう一度周りを見回し、誰もいないことを確認すると、
頭からコタツの中に忍び込んでいった。





 シンジがコタツ布団の中にそっと頭を入れていくと、そこは発熱器からの赤い光が薄
暗く辺りを照らす小さな世界だった。あらゆるものが赤みを帯びて、奇妙な感じだ。
 その中で、カオルの膝の辺りまでトレパンのウエストがずり落ちているのがシンジの
目に入った。縁ぎりぎりのところに、可愛い膝小僧に貼られた絆創膏が覗いている。

 眠っている女子高生のわずかに開いた両脚の間に、俺は首を突っ込んでいる──。
 そのことに改めて気づき、シンジの心臓が跳ね上がった。見ちゃいかんとは思いなが
らも、欲望が抑えきれず、シンジが視線をつい前に向けてしまう。
 バスケで鍛えたカオルの太腿が、シンジの目の前にかぶりつきで広がった。筋肉質で
むっちりと引き締まった、本来は真っ白であろう太腿だが、今は赤く照らされている。
(見てえ……もっと……)
 呼吸を荒くしながら、シンジが脚の付け根のほうへ視線を滑らせていく。やがてシン
ジの視線は、カオルの股間に吸い寄せられた。
 そこを覆っているのは、飾り気のないスポーティなデザインのパンティ。これも純白
なのだろうが、この小さな赤い世界の中ではやはり赤く染まり、熱く燃えているかのよ
うだ。
(う……やべえ……)
 少女の秘奥を頼りなく覆い隠す、薄い布切れ。その中心に息づく、かすかな盛り上が
り。シンジはそこから視線を外せなかった。頭に至近距離から赤外線が当たって熱いが、
そんな熱さなどなんのその、魅惑的な眺めにシンジの理性が次第々々に溶けていく。
 ごくり。
 トレパンを穿かせる使命も忘れ、シンジは生唾を飲み込んだ。嘗めるような視線を
しばらくカオルの下半身を注いだ末、ついに我慢が出来なくなったシンジは手を伸ば
して、そっと太股の内側に触れてみた。
(あ、暖けぇ……それにすべすべ……)
 少女の肌のぬくもりと、柔らかく張りのある手触りが返ってくる。
(ごめんカオルちゃん……でも、止まらねえ……)
 シンジはさらにコタツの中にぐいと体を入れ込んだ。目の前に広がるカオルの太股の
吸い付くような手触りを楽しみつつ、その内側をそっと両手で撫で上げていく。両脚の
付け根を覆う、赤く照らされたパンティにシンジの視線は注がれ続けていた。
 その中には、誰にも見せたことがないであろう、カオルの秘肉が息づいているのだ。
 喉がカラカラであることに気づき、もう一度生唾を飲み込むと、シンジはそっと指を
伸ばし、両脚の間、布地の幅が一番狭くなっているあたりに軽く触れた。
「……!」
 指先にごく軽く柔らかい布切れを感じた瞬間、シンジは指を引いた。緊張のうちに
数秒間が過ぎたが、幸いカオルが起きる気配はない。安堵の息をついたシンジは、再び
指をそこに忍び込ませていった。
 割れ目の辺りを、シンジが優しく上下に撫でつける。
 軽く押してやると、薄い布を通してくにゅっと柔肉が形を変え、指が食い込んだ。
(や……柔らけえ……)
 今度はその凹みの内側をゆっくり押し広げるように撫で回してやると、次第々々に
凹みが広がり、パンティになんとなく淫靡なくぼみが浮き出していった。
 シンジは一旦指を引き、カオルの反応をうかがう。ここまでしてもカオルが動かない
ことに力を得たシンジは、酒が回ってズキズキし始めた頭をこらえて指を伸ばし、パン
ティの幅がもっとも狭いところ、クロッチの横の縁にそっと指を掛けた。




 ごくり。
 もう一度生唾を飲み込むと、シンジは心臓が今にも破裂しそうに脈打つのを感じなが
ら、震える指で布地をそっと横にずらしてやった。だんだんとあらわになる、少女の体
の芯を目を血走らせて見つめつつ、パンティの細い部分をすっかり寄せてしまうと、シ
ンジの眼前に、とうとう隠すものとてなくなったカオルの秘奥が広がった。
(?!……このコ、生えてない……)
 カオルのそこには、成熟した女性にはあるはずの陰毛が生えていなかった。まるで幼
女のような、縦筋一本に見えるそこにシンジの淫靡な視線が注がれ、這い回る。
 赤く照らされて色はよく分からないが、ぷっくりした大陰唇は周りの肌とほとんど
変わらぬ色に見える。シンジの指が割れ目を優しく上下になぞると、しっとりと湿りを
帯びた、熱く柔らかい肉の感触が感じられた。
 そっと割れ目を押し開くと、中に息づく襞が恥ずかしげに覗き、シンジの欲望を掻き
立てる。まだ未成熟さを思わせるそこを、丹念に丹念に、ゆっくりと襞々をめくり上げ
ていくと、少女の体が次第々々に奥まであらわになっていった。
 
 シンジは、この辺かと思われるあたりを丹念に探索し、入り口を探し当てた。
(ここか……)
 シンジが優しく、わずかに指を前に出す。にゅるりと、ようやく第一関節まで女体の
中に忍び込んだシンジの指を、カオルの柔肉が暖かく包み込み、締め付けてくる。その
感触にシンジは陶然となった。性知識など全くないであろう、穢れを知らない少女の秘
奥を、今まさに指先で犯しているのだ。
 シンジは一旦手を引き、胸のポケットから携帯を取り出した。カメラに切り替え、接
写モードにすると、左手でVサインよろしくカオルの媚肉を開き、右手で携帯を構え、
カオルの股間に向けた。
 カシャ。
 赤く染まる小さな世界の中でフラッシュが光り、恥ずかしく開かされた少女の媚肉が
画面に写し出された。
(これで……いつでも、見られる……)
 シンジもそろそろ熱にやられて頭がぼーっとしてきているが、欲望に囚われた思春期
の男子がここで止まるはずがなかった。






(次は……)
 携帯を胸ポケットに収めると、シンジは再び指先をカオルの体に伸ばして思うがまま
に探索し、ついに小さな肉芽を探りだした。
(これが……クリトリス……) 
 ひそやかな突起に指を触れた瞬間、少女の体がピクンと震えた。ついで、いやいやを
するようにカオルがかすかに身をよじる。
 シンジの心臓が跳ね上がった。指を引っ込め、体を固くして、最後の審判を待つよう
な気持ちで天に祈る。もしも今、カオルが目を覚ましたら、一体どうなるのか?
(……起きないでくれ……)
 永遠とも思える数秒間ののち、カオルはそのまま動かなくなり、元のように規則的な
寝息を立て始めた。シンジは再び、大きく安堵の息をつく。
(さすがにクリトリスは危険か……じゃ、せめて……味わってやる……)
 これだけいじっても、カオルのそこにはっきりとした液体は感じられない。ごく僅か
にぬめりが感じられるだけだ。やはり意識不明では、十分に濡れるには至らないようだ。
 シンジは両手を床につき、顔をカオルの股間に埋めた。くんくんと匂いを嗅ぐと、奇
妙な匂いがシンジの鼻腔をくすぐる。
(これが……カオルちゃんのアソコの匂い……)
 処女のそこは臭いと聞いたことがあるが、シンジにはさほどの嫌悪感は湧かなかった。
いや実際に臭いといえば臭いのだが、嫌というほどではない、微妙な匂いだ。ついでシ
ンジは目前の秘裂の合わせ目にちゅっと唇を合わせ、そっと舌を出して媚肉をペロリと
嘗めた。
 カオルの体が再びピクンと震える。だがもうシンジはそれすら気にかけず、かすかな
ぬめりを掬い取り、舌の上で転がした。
(これが……カオルちゃんの蜜の味……これまた微妙な……)


 と思った瞬間、シンジの中で胸から何かがこみ上げてきた。
 アルコールをしこたま飲んだ上に、熱く赤い小さな世界に閉じこもり、至近距離から
頭を赤外線で照らされ続けた上、頭にたっぷり血が昇るような行為にふけったのだ。
 さらに、処女の匂いを嗅ぎ、蜜の味を味わったのが最後の引き金になったらしい。
 胃からすっぱいものが逆噴射してきて、シンジは口をおさえてトイレに駆け込んだ。
「う、うげえええええっ……」
 (以後、しばらくの間の描写は省略)




 出るものは全て出し、うがいをしてさっぱりしたシンジはようやく冷静に戻った。
(俺、結構すごいことしちまったな……)
 居間に戻ったシンジはかすかな悔恨の念にとらわれたが、後の祭りとはこのことだ。
 なんにしても、このままではまずい。カオルがまだ寝息を立てていることを確認する
と、シンジは再びコタツの中に忍び込み、横に思うさまずらしたパンティを名残惜しく
も元に戻し、トレパンの縁を持ち上げてカオルの豊かなヒップを苦心してくぐらせ、
きちんと腰まで着せた。
(……ふう)
 カオルママもぼちぼち戻る頃だ。シンジは一息ついて、まだズキズキする頭をふって
痛みをこらえ、みかんに手を伸ばした。が、重大な心配事が一つあった。
(……しかし……あれでも勃たないとは、俺、もしかしてED?)
 コタツの中に頭をうずめ、カオルの体に悪戯をしていたあのとき。あれだけ興奮しな
がら、シンジの股間は怒張はしなかった。若さに似ないこの鉄の自制心。シンジこそ、
仙人と呼ぶにふさわしい、わけはない。
(いや、ビデオではアレだけ抜けるんだし、EDなわけはない……結局、飲みすぎ?
それとも急にEDになったとか……いや、まさか……)
 何事も過ぎたるは及ばざるが如し。アルコールの摂りすぎがポテンツに悪影響を及ぼ
すことを、身をもって体験したシンジであったが、内心ではEDの不安を払拭すること
は出来なかった。
(あ、でも……もし勃っていたら、俺はどうしたろう?)
 シンジはそんなことを思いながら、カオルの安らかな寝顔を眺め、みかんを口に放り
こむ。みかんの汁が口の中に弾け、さっきの淫靡な眺めがシンジの脳裏をよぎる。
 カオルのほうは、少しはエッチな夢でも見たのだろうか? 目を覚ましたとき、この
コはいったいどんな反応をするだろう? 

 そんな思いを巡らせるうち、カオルの母親が帰ってきた。
「ただいま〜、あら、カオルは寝ちゃってるの? 飲みすぎたかしら」
 シンジに向かい、ピシ!と親指を立てるカオルママ。
「このコが寝ている間に、たっぷり楽しんでいただけたかしら?」
「い、いいいや、ととと、とんでもありませんはい。おいしい酒をご馳走になりまして、
はい」
 ずばりと言われたシンジ、心臓が跳ね上がり、顔は真っ赤だ。必死で言い繕うが、
挙動不審すぎ。
 さすがにこのままではまずい。シンジは深呼吸をして心を鎮め、再び口を開いた。
「……というか、あのお母さん」
「あら、お義母さんだなんて」
 このネタはさっきも言われたが、ここは突っ込む前に説明が先だ。
「カオルさんを連れてきたのは、かくかくしかじか、こういうわけで、カオルさんと僕
はそういう仲では……」
「あら、そうだったの? 残念ねえ。でも、カオルが初めて家にボーイフレンドを連れ
てきたんだもの、今日はおめでたい日なの」
 そりゃまあ、元旦ですからおめでたい日ですが、その理由づけはどうかと。
「いやあの、だからボーイフレンドでは」
「いいから、今夜はご馳走を食べて、しっかり体力つけてね?」
 シンジの反論など聞き流し、カオルママは買い物袋を下げて台所に消えていった。
 (……ていうか、何で体力?)
 シンジは溜息をついた。やはりこの母親もエロボケキャラらしい。




 やがて食卓にご馳走が並んだ。
「さあ、夕食の用意が出来たからいらっしゃい」
 ちらりと食卓を眺めたシンジ。
「わあ……すごいご馳走ですね」
 それにしても、赤飯、タイの御頭、うなぎまではまあいいとして、すっぽんに赤マム
シドリンクとはあからさまですぜ奥さん。
「今日は父さんは田舎に行って親戚周りをしているから、遠慮しないでね?」
 というかこの男、父親がいたら殺されそうなことをしてます。
「それじゃ、カオルさんを起こしてきます」
 シンジは居間に戻ると、まだ安らかな寝息を立てているカオルを揺り起こした。

「カオルちゃん、起きて。もう晩御飯だよ」
 ぼんやりとカオルが目を開き、ついで体を起してひとつ伸びをした。
「んーっ……あう、頭いたい……あ、シンジさん……」
「カオルちゃん、目が覚めた?」
「え……どうしてシンジさんがここに? なんで私、シンジさんの前で寝ているの?」
「覚えてないの? 神社で散々甘酒を飲んで酔っ払っていたから、家まで送ったんだよ。
なぜかその後も二人で酒を飲むことになって、君はそのまま寝てしまったんだ」
「えっ……そうですか……あ、あの……何か、しました?」
 まだズキズキするのだろう、こめかみを押さえながら、ぽっと顔を染めるカオル。
 シンジの心臓は再び跳ね上がった。
「い、いや、何も……」
 カオルを直視できず、虚空に視線をさまよわせながら必死で否定するシンジ。またし
ても挙動不審すぎ。
「そうですか……」
 カオルはそこはピュアピュア娘、シンジがしたようなことは夢にも思わないし、知り
もしない。シンジにとってはもっけの幸いではある。
「さあ、お母さんがご馳走を作ってくれたから食べよう」
「は、はい……」
(キスぐらい、してくれても良かったのに……あ、でも私のほうが眠っていたら、折角
の甘ーいキス、味わえないじゃん……)
 そんな乙女らしいことを思うカオルだったが、酔っていればともかく、素面ではこん
なことを言えるはずもなかった。というかこの娘、実は下の唇にはキスされてますが。
「あれ? ゴム、伸びちゃったかな……」
 立ち上がったところで、トレパンの腰がなんとなくゆるいことに気づいたカオルが
つぶやく。またしてもシンジの心臓が跳ね上がった。ビクっと身を震わせたシンジを
カオルがいぶかしむ。
「……シンジさん、どうかしました?」
「してないしてない! トレパンのゴムなんか知らないっ!」
「……?」





 カオルママに散々からかわれながらも、うまい夕食を取ったシンジ。
 今は満腹の腹をさすりつつ、自宅への帰途を歩いていた。
(それにしても、夢のような一日だったな……って、まさか夢じゃないよな……そうだ)
 夜道を歩きながら、シンジは携帯を取り出す。
 いつのまにか、カナミからの着信があったようだが、それはとりあえずほっといて、
データフォルダを確かめた。
 そこにはまぎれもなく、さっきコタツの中で撮った写真が残っていた。周りを見回し、
人気のない物陰に入り込むと、それを画面に表示する。
 寒空に似合わない、カオルの押し開かれた秘奥が大写しになった。
(やっぱり、夢じゃない……)
 当分おかずには困らない。が、これがカナミに見つかった日には、首でも吊らなけれ
ばなるまい。
(さて、どうやって隠そうか……)
 そんなことを考えながら画面を眺めるうち、シンジの下半身が急速に鎌口をもたげた。
(あ……よかった、俺、EDじゃなかった……)
 不安に囚われたり安心したりと忙しい一日のシンジだったが、これが本日一番の安心
ごとであったりする。

 改めて家に向かって歩きながら、シンジはカナミから着信があったことを思い出した。
何の用だろう? シンジはカナミの携帯に電話をかけた。
「……あ、カナミか? 俺だけど、電話くれたみたいだけど?」
「お兄ちゃん? ちょっと聞きたいんだけど……カオルちゃんとどこまで行ったの?」
「!”#$% な、なな?! 何のこ、こここ、ことだ?」
 シンジ、声が裏返ってます。
「とぼけても駄目だよ。ショーコちゃんの彼が紅白百合女学院の先生ってことは知って
るでしょ? カオルちゃんと、○×神社で巫女さんやってた女の子もだけど、知り合い
なんだって」
「%&$#@! あ゛、う゛……」
「で、事情を聞いたショーコちゃんが、巫女さんしてた女の子に持ってたお兄ちゃんの
写メールを見せたら、ビンゴ!って」
「……」
「もう家に帰ってくるんでしょ? どうなったか、詳しく聞かせてね?あ、マナカちゃ
んとショーコちゃんも来てもらってるけど、遠慮しないで、全部話してもらうからね」
 ぷちっと電話が切れた。
(…………)
 しばし固まり、顔面を蒼白にして立ち尽くすシンジ。
 カオルとカオルママはともかく、あの三人組の追求をかわすのは、さすがのシンジに
も難問である。完璧なストーリーを用意したうえ、ヤバい証拠など毛一本残してはなら
ない。
 と、いうことは……。
(あ〜、もったいねえ…………)
 とりあえず、マジ泣きしながら例の写真を削除したシンジであった。

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